ヒップホップの派生ジャンルとして80年代後半から90年代にかけて人気を博したMiami Bass“マイアミ・ベース“、Atlanta Bass“アトランタ・ベース“あるいはBooty Bass“ブーティ・ベース“と言われる曲の中から90年代にヒットした代表作をセレクトしました。
80年代に活躍したエレクトロベースのヒップホッププロデューサーである、Mantronixによる「Bass Machine」という曲がマイアミベース、アトランタベースの原型と言われていますが、もともとカリフォルニア出身でマイアミを拠点としていた2 Live Crewの80年代後半のブレイクスルーによって、たちまち一般的にその名を知らしめることになったと言えるでしょう。
90年代に入ると『Jump』の大ヒットでブレイクしたKris Krossのプロデュースで頭角を現したアトランタのプロデューサー、Jermain Dupli(ジャーメイン・デュプリ)のマイアミ・ベース、アトランタ・ベースを扱った肝入り企画『So So Def Bass All Star』のリリースによってシーンが最高潮の盛り上がりを見せることになります。
露骨な性的模写によるリリックとローランドTR-808をベースに使用した重低音のキックドラムを、ヒップホップとしてはかなり速いテンポ(BPM130~140)のトラックで煽っていく、イケイケで能天気なパーティサウンドは「下品」「キワモノ」扱いされることもありますが、本国でも非常に根強い人気のあるジャンルでもあり、各種スポーツイベントやCMなどでも多く活用されています。
音楽的にも意外と深いものがあり、元を辿ればAfrika BambaataaらによるNY、ブロンクス発祥のエレクトロ・ヒップホップやデトロイトテクノなどいわゆる『Ghetto Tech』の流れですし、その流れはサザンヒップホップ、現在全盛のトラップビートへと帰結し、ドラムンベースやダブステップなどのクラブミュージックとも遠くない縁のあるジャンルでもありますね。
今回は90年代の全盛を迎えたマイアミ・ベースの中から押さえておきたい10曲を聴いていきましょう。
90年代 マイアミ・ベース 10選
Tag Team – Whoomp! (There It Is)
アトランタのDCグレンとスティーブ・ギブソンによるラップデュオ、Tag Teamの1993年作のビルボードHot 100で2位、R&Bチャートで1位を獲得した大ヒット作品で90年代マイアミ(アトランタ)ベースアンセム。
ポジティブな盛り上げ系スタイルのパーティラップはスポーツなどのイベントやCM、ラジオなど、いまでも定番BGMアイテムとしても人気。
69 Boyz – Tootsee Roll
フロリダ、ジャクソンビル出身のVan”Thrill Da Playa”BryantとBarry”Fast”Wrightによるラップデュオ、69 Boyzの94年作。
ビルボードHot 100で8位、R&Bチャートで9位と、前出Whoomp!(There It Is)にも劣らない大ヒットを記録したイケイケパーティチューン。Quad City DJ’sプロデュース。
Quad City DJ’s – C’mon N’ Ride It (The Train)
Jay Ski、C.C. Lemonhead、紅一点JeLana LaFleurからなるマイアミのグループ、Quad City DJ’s(クワッド・シティDJ’s)の96年作。ビルボードHot 100で8位、R&Bチャートで3位、R&Bチャート15位と大ヒット。
マイアミベースのみならず90年代を代表するヒップホップソングとしても有名で、Whoomp!(There It Is)同様バスケットボールやアメフトなどスポーツイベントでもよく使用されていて、マイケル・ジョーダン主演の映画『Space Jam』のサントラにも参加していましたね。
Ghost Town DJ’s – My Boo
アトランタの4人組ヒップホップグループで、Jermaine Dupri(ジャーメイン・デュプリ)主宰So So Defレーベルの『So So Def Bass All-Stars』に収録され、サザンヒップホップの雄、Lil Jonがエグゼクティブ・プロデューサーを務めた96年作品。
マイアミベース系のR&Bソングの代表曲として当時からギャル受け必至のアンセム。
2016年にはYouTubeでのランニングマンチャレンジが流行し、ビルボードHot100の27位に再びチャートインするという異例のリバイバルヒットを記録。
INOJ – Time After Time
ミルウォーキー出身のシンガーAyanna PorterのステージネームINOJの98年作。前出『My Boo』に続くマイアミベースR&Bの傑作としてこちらも大人気だった曲。『So So Def Bass All-Stars Vol. III』収録。
オリジナルは言わずと知れたシンディー・ローパーの名曲カバー。
KP and Envyi – Shorty Swing My Way
アトランタ出身のKia PhillipsとSusan Hedgepethによるラップ&コーラスの白黒女性デュオ、KP & Envyiの98年作。
ビルボードHot100では6位を記録した彼女たちの唯一の大ヒット作品。
イントロからクールなギターリフにラップとコーラスがアダルトな雰囲気で絡む、マイアミベースのハイテンションで能天気なそれとは全く違うアプローチで、個人的に非常に好きだった曲です。
Bryson Tillerの2016年作『Exchange』でそのイントロ部分が使われてますね。
Duice – Dazzey Duks
ロサンゼルス出身のIra’LA Sno’Brownとバルバドス出身のAnthony’Creo-D’Darlingtonによるラップデュオ、Duice(デュース)の92年作でビルボードHot100で最高13位のヒット曲。
Afrika Banbaataの名曲『Looking for the Perfect Beat』と『Planet Rock』を使ったハードなビートにC’mon Baby~の掛け声がキャッチーな90年代前半の雰囲気が素晴らしいマイアミベース。
Prince Paul – Booty Clap
StetsasonicのDJであり、De La Soulのプロデューサーとしても名を馳せた80年代ヒップホップの重要人物であるPrince Paul(プリンス・ポール)が、96年代に作成したソロアルバム『PSYCHOANALYSIS(WHAT IS IT?)』に収録されていた、プリンスポール流ブーティ・ベース。
Sir Mix-A-Lot – Baby Got Back
マイアミやアトランタではなく北西部シアトル出身のSir-Mix-A-Lotが92年に放ったビルボードHot 100でNo1に輝いた大ヒット作。
デトロイトテクノのオリジネイター、Juan Atkinsの別名義Channnel OneによるKraftwerkを彷彿とさせる名作テクノ『Technicolor』の硬派なビート使いに、お下劣リリックのコントラストがグッとくる傑作として本国アメリカでは長く愛され(?)続けているブーティ・ベースアンセム。
2014年にNicki Minajがこの曲をカバーした『Anaconda』もサイコーでした。
The 2 Live Crew – Hoochie Mama
Ice Cube、Dr DRE出演の95年映画『Friday』のサントラに収録された2Live Crew後期のヒット作のひとつ。
68年クラシックソウルJimmy Smithの『Burning Spear』のギターリフ高速ループ再生とお馴染みLyn Collins『Think(About It)』の組み合わせによるイケイケビート。
このギターリフは2019年Gucci ManeとMegan Thee Stallionの『Big Booty』でも使われています。
まとめ
90年代 マイアミ・ベース、アトランタ・ベース、ブーティ・ベース10選でした。たまにすごく聴きたくなるこのジャンル。日本でも特に基地(ベース)近くのクラブやイベントでは鉄板でしたね。
落ち込んでいるとき、テンション高めたいとき、何も考えずノリノリになりたいときにはやっぱりサイコーのジャンルです。