アメリカ西海岸を中心に2000年代中盤頃から徐々に認知されてきているアジア系アーティストを中心としたアコースティックポップ/R&Bムーヴメント。
アメリカの音楽シーン、ショウビズシーンではなかなか成功することが難しいアジア系ミュージシャンですが、YouTubeやストリーミングサービスの台頭とともに、そのステージを活かしてインディペンデントでプロモーションすることで一定の認知とファンを獲得しデビューするアーティストが増えてきています。
アジア人特有の繊細さとソフトなボーカルを、美麗なメロディに乗せアコースティックに仕上げた楽曲はゆったりと聴きたい心和むものばかりで、一度その魅力に取りつかれるとなくてはならない存在になるのではないかと思います。
今回は、代表的なアジア系 アコースティックR&B の男性ミュージシャン7人をご紹介していきます。
Gabe Bondoc
カリフォルニア州サンマテオを拠点とするフィリピン人アメリカ人のインディーポップ/アコースティックシンガー、Gabe Bondoc(ゲイブ・ボンドック)。
2006年に「Gentlemen Don’t」と2007年に「Hi、My Name is Gabe」の2つのEPをリリース。アジア系アコースティックシーンを古くからけん引してきた存在で、同系アーティスへの楽曲提供、共同制作でもかなりサポートしている兄貴的存在。
R&B系からキャッチーなインディポップ、しっとりと聴かせるメロウアコースティックまで幅広く、どれも優しく包み込んでくれそうな作品ばかり。
アルバムは2010年『Summertime LP』から2019年『One』まで現在5枚リリースされています。
The One
Gabe Bondoc – Gentlemen Don’t
Jeremy Passion
アメリカ、サンフランシスコを拠点に活動するフィリピン系アメリカ人のシンガーソングライター、Jeremy Passion(ジェレミー・パッション)。
スティービー・ワンダーやブルーノ・マーズの初期、あるいはジェイソン・ムラーズなどを想起するスムースでメロディックなアコースティックR&Bはインターネット上でたちまち話題となり、2011年アルバム『For More Than A Feeling』によって、それまでアジア系で成功することが難しかったアメリカ音楽シーンの中でその実力が認められる存在となりアジア系アコースティックR&B/ソウル・ムーブメントの中心人物に躍り出たアーティスト。
2018年にはセカンドアルバム『Ⅱ』もリリースしています。
Jeremy Passion , Melissa Polinar , Gabe Bondoc – Lemonade
Jeremy Passion & Jesse Barrera – Constant
AJ Rafael
カリフォルニア州モレノバレー出身のフィリピン系アメリカ人シンガーソングライター、AJ Rafael(AJラファエル)。
2011年にファーストアルバム「Red Roses」をリリースし、iTunesのポップチャートで5位となり注目される存在に。現在もYouTubeに毎週動画アップを続けており100万人近いフォロワーを獲得しています。
切ない系の正統派アコースティックポップは、実直で誠実さを感じる歌声と相性抜群で心に響きます。
AJ Rafael – Waking Up Sucks (Sometimes)
AJ Rafael – Like Me
JR Aquino
アラスカ出身で現在はラスベガスを拠点にするフィリピン系アメリカ人シンガーソングライター、JR Aquino(JR・アキノ)
アメリカのオーディション番組『アメリカンアイドル』の第4シーズンに出場(入賞はならなかった)、その後同じくアメリカのオーディション番組『The Voice』の第3シーズン彼にも出演しシンガーとして知られる存在に。
2010年にYouTubeにアップされた「By Change(You&I)」のパフォーマンスは900万近い再生数に達し、長きに渡り聴かれている楽曲。
アルバムは2013年『This Time Around』以降リリースされていませんが、シングルはコンスタントにアップされています。
シルキーなコンテンポラリーR&Bからアコースティックポップまで、オーディション番組で鍛えられたソウルフルな歌声が冴えわたります。
Jr Aquino – By Chance (You & I)
Jr Aquino – Beautiful Struggle
Joseph Vincent
ロサンゼルス出身のフィリピン系アメリカ人シンガーソングライター、Joseph Vincent(ジョセフ・ヴィンセント)。
学生のころ(2008年)からYouTubeにジャック・ジョンソンやジェイソン・ムラーズのカバーをアップし、YouTube上で人気を得、現在では150万のフォロワーを獲得。
2012年アルバム『Blue Skies』をリリース、その後もYouTubeを中心にオリジナル曲を定期的にアップしています。
アメリカでの人気もさることながら、シンガポール、カナダ、オーストラリアでもチケットソールドアウトになるほどワールドワイドに人気のあるアーティスト。
ジャック・ジョンソンやジェイソン・ムラーズ、あるいはマルーン5のようなピュアなポップ感性とR&Bテイストが混ざり合う、どんなシーンでも気持ちの良く心が和むような楽曲。
Joseph Vincent – Lay You Down
Joseph Vincent – Brain Noise
Jason Chen
ボストン生まれでカリフォルニア州アルカディア出身の台湾系アメリカ人のシンガーソングライター、Jason Chen(ジェイソン・チェン)。
母親はピアノの教師であるためピアノ、ギター、バイオリンなど、幼少期からさまざまな楽器を学び、UCLAの経済学博士号を取得したのち音楽活動に専念するという知性派。
彼もまたYouTubeにおいてカバー曲のアップからフォロワー数を増やし、現在では200万弱の登録者を獲得。
カバーアルバムをいくつかリリースし、2011年オリジナルアルバム『Glavity』をリリース。その後もカバー/オリジナル両面で精力的な音楽活動を続けています。
正統派アコースティック・ポップに表現力豊かなチェンのボーカルが冴える、結構メジャーでも通用しそうな楽曲が多い印象です。
Jason Chen – Just a Dream
Jason Chen – Best Friend (Acoustic)
Ruben Wan
中国系パナマ人で、現在はロサンゼルスに拠点を置くギタリスト、プロデューサー、Ruben Wan(ルーベン・ワン)。
セッションギタリストとしてOnerepublicのRyan Tedder、Elijah Blakeらのレコーディングやパフォーマンスに参加する実力派。
YouTubeへのプレイ動画アップで徐々にファンを獲得し、現在はシングル中心のオリジナル楽曲をリリースしており、今後、アジア版Tom Misch的なギター&トラックメイカーとしての活躍が期待できる若手ギタリスト。
Ruben Wan – Rain
Ruben Wan,Gabe Bondoc,Renny Goh – Littele Things
アジア系 アコースティックR&B : まとめ
ゆったり聴きたい アジア系 アコースティックR&B/ポップ 7アーティストをご紹介しました。
フィリピン系ミュージシャンが多く、中華系含めこのミュージシャン同士の共同制作もかなり頻繁に行っているようです。
YouTubeやSNSの台頭により、メジャーレーベルに所属していなくても人種や国に関係なく才能のあるミュージシャンが自力でデビューできる環境が整ってきた2000年代中盤以降を物語るようなアジア系アコースティックR&B界隈、88Risingなど、アジアと世界を結ぶプラットフォームによって益々アジア系アーティストの活躍の場もグローバルになっていくものと思います。