ボーカルのTracey Thorn(トレイシー・ソーン) とプロデューサーのBen Watt(ベン・ワット)によるイギリスのライト・ジャズ~アコースティック・ポップデュオ、 Everything But The Girl (エヴリシング・バット・ザ・ガール 通称;EBTG)。
80年代前半イギリスで隆盛を誇ったいわゆる”ネオアコ”(ネオ・アコースティック)の代表的なグループとしてアズテック・カメラらとともに語られていたり、当時のカフェミュージックとしてマットビアンコ、(アルバム『Cafe Blu』のバックミュージシャンも務めた)スタイル・カウンシル、あるいはスウィング・アウト・シスターなどと並んでイギリス産ポップとして日本でも人気の高いグループでした。
1982年結成後90年代にかけて活動していましたが、初期~90年代前半はジャズ、アコースティックをベースにした繊細なポップス、90年代中盤からは、かなり現代的なUKガラージ、ハウス、クラブミュージックへと真逆な方向へと華麗に変貌を遂げ、どちらの側面においても一定の成功を収めた珍しいグループですね。
ベン・ワットの難病もあり2000年代以降の活動はされていませんが、トレイシー・ソーンはソロアーティストとして現在も活動中。
80年代から90年代に輝いたこのイギリスの男女デュオの足跡を、10枚のアルバムそれぞれの代表曲とともに振り返ってみたいと思います。
Everything But The Girl : レビュー
Each and Every One
1984年のデビューアルバム『Eden』より。
シャーデーのプロデューサーとして有名なロビン・ミラーがプロデュースを担当。それとわかるようなUK産ライトジャズの香り漂う楽曲を中心に、シンプルなアコースティックをブレンドした上品な楽曲の数々が当時のブリティッシュポップらしい仕上がり。
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When All’s Well
1985年アルバム『Love Not Money』より。
1stよりも伝統的なギターサウンドへと移行した感のある、若くキラキラとした疾走感に包まれた初期の名曲。ネオアコ、渋谷系なんていう言葉がピッタリとハマるような眩しくもフレッシュな味わいのあるアルバム。
アメリカ版のアルバムにはプリテンダーズのカバー「Kid」「Heaven Help Me」が入っているところもコンセプトに合ってますね。
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Come On Home
1986年『Baby, The Stars Shine Bright』より。
ビートルズやピンクフロイドらも録音を行ったことで有名なアビーロードスタジオで収録した3rdアルバム。
ストリングスやホーンを大々的にフィーチャーしたオーケストレーションな作りで優雅さのある王道的なポップスに仕上げており、ドラマチックな展開はアルバム通して一つのストーリーとしてパッケージングされていると思います。
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Love Is Here Where I Live
1988年『Idlewild』より。
今までの作品における様々なアプローチを通して、良い意味でETBGとしてのバランが取れた仕上がりで、全英アルバムチャートで最高13位、Rod Stewartのカバー『I Don’t Want To Talk About It』はシングルチャート3位と商業的にも成功。
今までのアコースティックをベースにしながらもドラムマシーンやシンセも取り入れており、当時流行したSoulⅡSoulなどによるUKソウル(グランドビート)の影響も少し感じさせられ、のちのクラブ系サウンドへの伏線も(結果論として)実はあるんじゃないかと思わせられます。
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The Language of Life
1990年『The Language Of Life』からのタイトルカット。
マイルス・デイヴィスやポール・マッカートニーのプロデュースも手掛けた名匠、トミー・リピューマをプロデューサーに迎え、オマー・ハキム、ジョー・サンプル、マイケル・ブレッカーなどNY/LAジャズ、フュージョン界の大物ミュージシャン+スタン・ゲッツまで登場する充実したバックアップ陣でデビューアルバム以来のジャズへの回帰となった作品。
いつにもましてしっとりと、ジャジーで繊細なアンサンブルとトレイシー・ソーンの憂いをまとったような美しい歌声が全曲に渡って展開される作品。
個人的にETBGの中で一番聴き込んだアルバムです。
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Twin Cities
1991年『Worldwide』より。
初の単独プロデュース作品として作られ、ETBGのパブリックイメージに一番合っているような、アコースティックでポップ、心が温まるような優しい味わいのあるシンプルなサウンドを展開。
前作とは打って変わって、前々作『Idlewild』をより突き詰めたようなETBGらしい世界観で、安心して聴ける内容です。
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Driving (Acoustic)
1992年『Acoustic』より。
全編シンプルなアコースティックアンサンブルによる名曲&セルフカバー集。
ブルース・スプリングスティーン「タファー・ザン・ザ・レスト」、シンディ・ローパー「タイム・アフター・タイム」とエルビス・コステロ「アリソン」、トム・ウェイツ「ダウンタウン・トレイン」などのカバーもさることながら、「ドライビング」「エプロン・ストリングス」など自身の楽曲も透き通るようなハーモニーカバーが素晴らしい出来。
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Missing
後期のETBGを語る上でポイントとなるアルバム、1994年『Amplified Heart』より。
イギリスのトリップホップユニットであるMassive Attack(マッシヴ・アタック)の『Protection』でトレイシー・ソーンがボーカルフィーチャーされてヒット。これを機に、かねてからチャレンジを考えていたというクラブミュージックへのアプローチに挑戦。
ギターにリチャード・トンプソン、ベースにダニー・トンプソン、ドラムにデイブ・マタックス、そして初期ドラムンベースの雄、Spring Heel Jackのジョン・コクソンを迎え、アコースティックとエレクトロニカのハイブリッドアルバムを実現。
このシングル『Missing』ではハウスミュージック界の英雄、Todd Terryがリミックスを施し全米2位を含む世界的大ヒットで、結果的にETBGの中で商業的に一番成功したアルバムとなるとともにクラブミュージックフリークにもその名が知れ渡るようになります。
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Before Today
96年『Walking Wounded』より。
完全にクラブミュージックへと傾倒した内容になり、クラブミュージックファンを中心に新たなファンを確立するとともに、どこか残るETBGらしい旋律が古くからのファンにもショックがありながらも受け入れられる絶妙なセンスが光る作品。
ドラムンベース+ETBGは非常に新鮮でありながら、前からやっていたかのような妙なしっくり感まで抱かせる説得力。
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Five Fathoms
1999年の実質的なラストアルバムとなった『Temperamental』より。
完全にクラブミュージックと化した、ドラムンベース、エレクトロニカ、ディープハウスの世界が繰り広げられているものの、ETBG特有の上品さのようなものが根底にあるがゆえに嫌味なく素直に耳に入ってくるのが不思議。
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まとめ
華麗に進化し続けたUKポップデュオ、Everything But The Girl(エヴリシング・バット・ザ・ガール)でした。
アルバムごとにアプローチ、表現は違えど彼らの音楽に向き合う真摯な姿勢と80年代~90年代のブリティッシュポップの繊細であり軽やかなヴァイブ、そしてトレイシー・ソーンの知的なボーカルがこの上なく魅力的なグループでした。
ベスト盤はこちらがおすすめ。





