ボルチモア出身でNY~LAを拠点に活動するミュージシャン、Josiah Wiseのソロプロジェクト、 serpentwithfeet (サーペントウィズフィート)。
ボルチモアの宗教的な両親のもとで育ったJosiah Wiseは、子供のころから聖歌隊で学び演劇的なテーマやゴスペル的な感覚に長けており、一時はオペラ歌手になることを目指した洗練されたヴォーカル、ビブラートは芸術的官能性を有するもの。
2016年ビヨークとの共同制作も務めるイギリスのプロデューサーHaxan Cloak(ハクサン・クローク)とともに、EP『bristers』を制作しデビュー。
Haxan Cloakによるアンビエント・プロダクションの上に、ネオソウル、ファンク、R&B、ゴスペルが幻想的に渦巻くエクスペリメンタルR&Bと、自身のバックグラウンドとしてのゲイ、クィアエクスペリエンスの世界観が融合する様はFrank OceanやBlood Orange、The Weekendといったこの時代のトレンドとクロスオーバーする内容。
2018年アルバム『soil』でも、そのエッジが際立った芸術性の高いバロックポップ、エクスペリメンタルR&Bを展開する一方、2019年『Receipts』や『Ego Death』においてTy Dolla Signとの仕事やEllie Gouldingとのデュエットなどメインストリームのアーティストとの共演を経験。
そして2021年3月にリリースされた『DEACON』では、いままでのクィアなバックグラウンドをよりストレートな表現方法によりシンプルでありながらも深い愛情と友情を切々と紡ぐように、ロマンティックでスピリチュアルな桃源郷のような至福の世界観が展開されています。
そのアルバム『DEACON』を中心にserpentwithfeetの世界観をレビューしていきたいと思います。
serpentwithfeet : レビュー
Fellowship
『DEACON』より4曲。
柔らかい音色と、穏やかに流れるような浮遊するボーカルが魅力的。ソングライティング、プロデューサーにはSolangeなども手掛けるSamphaやLil Silvaが絡んでいます。
Same Size Shoe
微笑ましいほどの愛情に満ち溢れたPVとともに黒人男性ゲイとしての想いをストレートに表現。
Amir
温かみのあるエネルギーを感じさせるボーカルに、Music Soulchildのようなクリアさのある芳醇なR&B~ネオソウル。
Heart Storm (with NAO)
イギリスのシンガーソングライター、Naoをフィーチャーし、複雑なアレンジをみせるボーカルラインは力強さと壮大な美しさを兼ね備えたバロックポップ・R&B。
A Comma
2020年リリースのシングル。Janelle MonaeやHAIMを手掛けるWynne Bennettをプロデューサーに迎え、現代とクラシックを優雅にブレンドしたエクスペリメンタルポップ。
bless ur heart
2018年『soil』より。
揺れるピアノコードとドラムマシンによるシンプルなトラックにバロックオペラのような雰囲気を持つ、サーペントウィズフィートならではの世界観が堪能できます。
まとめ
愛が溢れるロマンティックR&B、 serpentwithfeet(サーペントウィズフィート)でした。
愛への情熱をより温かく穏やかな方法で表現した『DEACON』は、壮大で美しいアーティスティックさと、ストレートなR&B・ポップの両面を兼ね備えた新たなステージへと広がりをみせる作品になっています。