サウスロンドンを代表するキーボード奏者兼プロデューサーである Henry Wu (ヘンリー・ウー)こと Kamaal Williams (カマール・ウィリアムズ)。
台湾人の母親とイギリス人の父親を持ち、ともにグラフィック・デザインの仕事をしている文化的に多様な家庭で育った。
両親の影響を受け幼少期には中国語やイスラム教のカリグラフィも学び、後に(自身のあるアルバムジャケットでも披露している)グラフィティ・アーティストとして活かしていく。
10代になると音楽に熱中しスクールバンドでパーカッションを担当するようになり、ヒップホップ、グライムの影響と父親からの影響でマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、カルロス・サンタナなどのジャズやフュージョンに傾倒。
その後キーボーディストとしてとして活動、2011年にイスラム教に改宗しKamaal Williamsと名乗るようになり、Tenderlonious主宰のロンドンアンダーグラウンドレーベル22aと契約。
ジャズとハウス・ミュージック、エレクトロニック・ブロークン・ビート・サウンドを組み合わせた自身のトラック制作を開始し、2016年頃、ドラマーのYussef Dayesと親交を深め、ジャズ・ファンク・デュオYussef Kamaalを結成。
その盟友Yussef Dayes(ユセフ・デイズ)とのジャズ・プロジェクト、Yussef Kamaal(ユセフ・カマール)『Black Focus』はUKジャズシーンの中で大きな話題となり、その後2018年リーダーアルバム『The Return』をリリース。
Yussef Kamaalで表現された70年代ジャズファンクスピリットを継承したファンクネスでコズミックなフュージョン・サウンドは、Lonnie Liston SmithやRoy Ayers、Herbie HancockからAzymuthまでをも想起させ、Kamasi Washingtonを筆頭にLAを中心としたスピリチャルジャズよりもクラブジャズ寄りな、現代ロンドンジャズらしい作品でした。
2020年には自身のレーベルBlack Focusからからその名も『We Hen』という会えるバムをリリース。ドラマーGreg Paul、ベーシストRick Leon James、サックス奏者Quinn Masonをコア・サイドメンとして迎えた生演奏による漆黒のジャズファンクアルバムをリリース。
2022年に入ってからは”Henry Wu”名義によるリリースが活発になっており、こちらはエレクトロニック・ブロークン・ビート・サウンドをメインにしたクラブミュージックの色合いの濃い作品が主体となっています。
Kamaal Williams & Henry Wu – レビュー
HENRY WU – PHONE CALL
2022年ヘンリー・ウー名義作。90年代テイスト溢れるアンダーグラウンド・エレクトロニックチューン。真夜中のドライブ必携アイテム!
Jianbo – Mongkok Madness feat. Henry Wu
チャイニーズ・ベトナミーズのイギリス人ラッパー、Jianboとの共演。ヘンリー・ウープロデュース作。
Salaam
いきなりの現代版Roy Ayers、いや、ロイ・エアーズの再定義的ブラックフュージョンの決定版。
High Roller
Lonnie Liston Smithばりの70年代コズミックフュージョン。スペイシーなシンセ音とドラムロールが灼熱の彼方へと引き込まれていきそうなファンクチューン。
New Heights
UKダウンテンポ界実力者、Darkhouse Familyを共同プロデュースに迎えた2019年シングル。ドラム、ピアノ、ベースがスリリングに進行するダークでファンクネスなヘンリー・ウーの世界観。
Hold On feat. Lauren Faith
2020年作『Wu Hen』より。
フェンダーローズやハープを妖艶に仕込んだHenry Wuのセクシーな世界観にKaytranadaのバックアップでも知られるシンガー、Lauren Faithの無垢なボーカルとのコントラストが素敵なR&B。
Kamaal Williams – Pigalle
2020年作『Wu Hen』からもう一曲。
Quinn Mason(クイン・メイソン)のテナーサックスとLAのKatalystにも参加しているドラマー、Greg Paul(グレッグ・ポール)による強力セッションがオーセンティックなジャズとストリート・ジャズが交錯した躍動を感じさせてくれる作品。
Yussef Kamaal – Remembrance
ユセフ・デイズとカマール・ウィリアムスのこの緊張感漂う展開。ユセフの情熱的なドラムに呼応するかのような起伏に富んだ展開が、ザラザラとした感触と共に生々しく伝わってくるスピリチュアルファンク。
Yussef Kamaal – Calligraphy
やはり動画で観たい!ってことでアツいスタジオセッション。
まとめ
ロンドンを代表するファンクネスジャズ、 Henry Wu – Kamaal Williams (カマール・ウィリアムズ)でした。有能なミュージシャンを数多く輩出するロンドンジャズシーンにおいても、その動向は見逃せない要注目人物の一人です。