フィラデルフィア出身のドイツ系アメリカ人、Daryl Hall(ダリル・ホール)とニューヨーク生まれでフィラデルフィアで育ったスペイン・イタリア系アメリカ人のJohn Oates(ジョン・オーツ)によるロック・ソウルポップデュオ、Hall&Oates( ホール&オーツ )。
1972年『Whole Oats』でデビュー。Daryl Hallの頑なまでのソウルミュージック愛が高じて、まだ「ブルーアイドソウル」なんていう表現もないころからR&B/ソウルをベースとした楽曲を展開。
特に70年代は比較的オーソドックスなソウルミュージックにロック、AORを組み合わせたでモダン・ロックンソウルで徐々に人気を博し、1977年のシングル『Rich Girl』で初の全米1位を獲得。
その後やや低迷期があったものの、R&B/ソウルをベースに爽快感のあるコード進行、(曲によって)ドラムマシーンの導入、サックスソロなどの展開をフォーマット化したポップな楽曲でいよいよ80年代の黄金期へと突入していきます。
その後はもう、押しも押されぬ80年代ポップスを代表するレジェンドとなったわけですが、今回はそのホール&オーツの全盛期からの代表曲をピックアップしベストイレブン、11曲をレビューしていきます。
ホール&オーツ :レビュー
Rich Girl (1977)
5枚目のアルバム『Bigger Than Both of Us』にして初の全米No1ヒット。この年代っぽいソウルテイストとストリングスの効いたメロディがポップ感を醸し出している初期の名作。
Wait For Me (1979)
アルバム『X-Static』より全米最高18位。プロデューサーは名匠デヴィッド・フォスター。
レトロ&ソフトな旋律はこのアルバムの副題でもある「モダンポップ」のイメージにピッタリ。今聴くとどことなくメイヤー・ホーソーンを聴いている錯覚になりますね。
Kiss On My List (1981)
1980年アルバム『Voice』より全米No1ヒット。ここから始まる全盛期のスキームと言っても良いほどのポップ&ソウルなつくりは万人に愛されもの。この時期に開設されたMTVの潮流とともにいよいよ彼らの時代が到来します。
Private Eyes (1981)
前作『Voice』の商業的成功を経てそのフォーマットをより完成度を高めたアルバム『Private Eyes』よりタイトルトラックの全米No1ソング。
言わずと知れた彼らの代表曲でもあり、80年代ディスコ・ダンスクラシック、ポップクラシックであります。
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I Can’t Go For That (1981)
アルバム『Private Eyes』からのセカンドカットで全米No1ソング。”Kiss On My List“~”Private Eyes“の爽快なポップ路線とは一線を画したモダンなR&Bチューン。
Kiss On My Listでも使われていたドラムマシーン、Roland CR-78のビートとモダンなシンセメロディ、ダリルホールのソウルフルなボーカルはヘビーなR&B/ソウルファンも唸らせる内容。
この曲のフレーズを題名にしたDe La Soulの”Say No Go“のサンプリングソースとして、ヒップホップファンからも愛されているマルチな曲。
Maneater (1982)
彼らの快進撃が続く中のベストオブベストなアルバム『H2O』より、ファーストカットの全米No1ソング。
レゲエのリズムと裏箔を使ったモータウンビートを組み合わせた独特でクセになるサウンドと”I Can’t Go For That”で見せたモダンな雰囲気が見事にマッチしたアーバンポップ。
スティーヴィー・ワンダーの85年作『パートタイム・ラバー』とよく似ていますが、いわゆる”モータウンビート”のイントロダクションの使いどころなんでしょうね。
One On One (1983)
アルバム『H2O』からのセカンドカットで全米最高7位。個人的にホール&オーツの中のダントツNo1ソング。
シンプルなリズムと甘美なピアノコードに、ソウルフルで表現豊かなボーカル&コーラスが素晴らしい極上メロウクラシック。
Say It Isn’t So (1983)
1983年リリースのベストアルバム『Rock ‘n Soul Part 1』に収録された2曲の新曲のうちの一つとして全米最高2位を記録した曲。
この翌年にリリースされる『Big Bam Boom』のフォーマットに近い、良くも悪くもこのMTV全盛時代のポップ・ロックの色合いを濃くしたサウンド。
Adult Education (1984)
“Say It Isn’t So“に続きベストアルバム『Rock ‘n Soul Part 1』に収録された新曲のふたつ目。全米最高8位。
力強くダンサブルなビートを軸にしたロック&ポップ。
Out Of Touch (1984)
84年『Big Bam Boom』からのファーストカットで彼らとしては最後の全米No1ソング。
彼らの成熟されたサウンドは遂にここまで来たか、と思うほど、洗練されたロック&ポップはこの時代のポップス界の先端サウンドとして大いに存在感を発揮した作品なのではないでしょうか。
個人的にはR&B/ソウルな要素が影をひそめてしまっているのが残念ですが、それはもうこの時代のトレンドとして仕方のないところなんでしょう。(とか言いながら当時は嬉々として聴いてましたけどね)
Method Of Modern Love (1984)
『Big Bam Boom』からのセカンドカットで全米最高5位。ちょっと変わったユニークなリズムパターンとAメロからのモダンな展開が面白いミディアムダンスチューン。
ウータンクランの”Method Man“でMethod Man自身がこの曲のフレーズを使っていてヒップホップファンにはお馴染みですね。
まとめ
ホール&オーツ珠玉の名曲ベストイレブンでした。彼らの結成は1970年なので2020年でちょうど結成50年ということになります。
この記念すべき年に何かやるのかと思いきや、「そんな同窓会みたいなことには興味がない」のだとか。全盛期のころからちょっと思ってましたが、かなりベタなポップスやっててもどこか頑固というか質実剛健なところがあるんですよね、特にダリル・ホールは、やっぱりドイツの血筋なんでしょうか。
2022年現在はそれぞれソロ活動していて、ダリル・ホールは過去のヒット作+オンライン・ライヴ・シリーズの音源からピックアップされたアルバム『Before After』をリリースし、ハウスバンドと共にツア2ーを開催中。ジョン・オーツもソロでベス・ハートのツアーのスペシャルゲストとして出演したりしているようです。
こうやってあらためて聴いてみると彼らの意志を受け継いでいる現代アーティストはMayer HawthorneとJake OneによるTuxedoのような気がしますね。