De La Soul / ヒップホップの歴史を変えたレジェンドトリオ

De La SoulHip Hop

NYロングアイランドのレジェンド・ヒップホップトリオ、 De La Soul (デ・ラ・ソウル)。

メンバーのPosdnuos (Kelvin Mercer)、 Trugoy the Dove (David Jude Jolicoeur)、 Pasemaster Mase (Vincent Lamont Mason, Jr.)によって同級生だった高校時に結成。

「Plug Tunin」(のちにデビューアルバムに収録)というデモテープを作り活動していたところ、ブルックリンで活躍していたヒップホップバンド、Stetsasonicのリーダー兼プロデューサーで、のちのデ・ラ・ソウルの4人目のメンバーとも言われるPrince Paulの耳に留まり、彼らが所属していたレーベルTommy Boyとの契約に結び付きデビューを果たします。

そのプリンス・ポールがプロデュースしたアルバム『3 Feet High and Rising』で1989年デビュー。

カラフルなプロダクションと巧妙かつおどけたユーモアが同居するライムスタイルは、Public EnermyBoogie Down Productionなど当時全盛だった攻撃性と人種差別や政治に対する正義の怒りに大きく支配されたマッチョなスタイルのヒップホップ界において、個の日常にスポットを当てたより穏やかで独創的な唯一無二の存在でした。

この作品が当時のヒップホップ界に与えた影響は計り知れず、その後のヒップホップの表現スタイルが拡大されいく礎になったことは言うまでもありません。

プリンス・ポールプロデュースのトラックメイクにおいてもファンク、JB系サンプリング全盛のなかでポップ、ジャズ、レゲエ、サイケデリアなど幅広いジャンルのサンプリングを活用した魅力的なサウンドパッチワークで、独創的で多彩な世界観を創り上げていました。

この潮流は同世代のア・トライブ・コールド・クエスト、クイーン・ラティファ、ジャングル・ブラザーズ、モニー・ラブなど、ニューヨークを拠点とするオルタナティブ・ラッパーたちと「Native Tongue Posse」として一時代を築くことになります。

日本においてもそれまでの、ある種海の向こうの政治論争やギャングの世界だったヒップホップがより身近になり、このNative Tongue Posseの人気は非常に高く、自分もそうですがこの時代のヒップホップファンなら誰もが大きな影響を受けたかと思います。

ここから90年代~2000年代にかけて紆余曲折ありながら様々なアプローチで我々ヒップホップファンに魅力的な作品を提供し続け、最近では版権の問題でレーベルTommy Boyとの長年の法的闘争で過去のアーカイヴへのストリーミングアクセスができない問題がようやく解消されてきた矢先の2023年2月12日に、メンバーのひとり、 Trugoy the Dove (David Jude Jolicoeur)の訃報が伝えられています。享年54歳。

ここでは初期の名作を振り返りながら追悼をしていきます。

De La Soul : レビュー

ヒップホップ界に燦然と輝くクラシック。コアな層だけでなくヒップホップをより多くのリスナーが触れるきっかけとなった作品。全米ポップチャート最高34位を記録。

マッチョなBボーイらとは対照的な「学校にいるイマイチイケてない普通の少年たち」といった構図をユーモアたっぷりに表現していますね。

De La Soul – Me Myself and I (With Intro) (Official Music Video) [HD]

 

The TurtlesのドラムブレイクにDetroit Emeraldsのギターリフ、Hall & OatesのタイトルコールやThe EmotionsSly Stoneなどを斬新な発想と凝ったサンプリングでコラージュしていてみんなが度肝を抜かれた曲。

Say No Go (Say No Dope Mix)

 

2ndアルバム『De La Soul Is Dead』より、A Tribe Called QuestQ-Tipも加わった人気曲。

Instant Funkの”I Got My Mind Made Up“のイントロ使いからMighty Ryedersの”Evil Vibelation“をメインにChicagoの”Saturday In The Park“のサビを使いうという離れ業を披露。そもそもサンプリングネタとしてシカゴを使うというのが当時斬新でしたね。

A Roller Skating Jam Named "Saturdays" (Official Audio)

 

アルバム『Buhloone Mindstate』より93年作。スモーキー・ロビンソンThe Bar-Kays、そしてマイケル・ジャクソンの「I Can’t Help It」のベースライン使いに3人の成長したフロウが心地良い秀作。

このアルバムにはスチャダラパーと高木完も参戦した”Long Island Wildin“も収録。

De La Soul – Breakadawn (Official Audio)

 

96年アルバム『Stakes Is High』からのタイトルトラック。今までの雰囲気とは違ったタイトで緊張感のあるフロウ、Ahmad Jamalの”Swahililand“を使ったディープなトラックで、良い意味で今までのイメージを覆した個人的にも大好きな作品。

そしてプロデューサーは脱プリンス・ポールに挑戦し、のちにレジェンドとなるJ DillaことJay Deeが担当。

De La Soul – Stakes Is High

 

ヒップホップの歴史を変えたレジェンドトリオ、 De La Soul (デ・ラ・ソウル)でした。

Trugoy the Doveは近年、うっ血性心不全によりパフォーマンスから遠ざかっていたこともありますが、これで3人そろってのパフォーマンスは永遠に見れないのは非常に残念です。

ここにご冥福をお祈りします。